バンダイ HG 1/72 メイレスジョウガン改第二回 片持ち関節と工業デザイン



 バンダイ1/72ジョウガン改はアニメ「境界戦機」第一期21話(第一期第二部8話)『動乱の兆し』→第21話|アニメ 境界戦機【BANDAI SPIRITS】 - YouTubeから登場するロボットの模型。

第一回
→模型概要
→模型詳細
→ポリキャップ不使用
第二回
→片持ち関節
→1/72スケールの縁(えにし)
第三回
→憎悪と怨嗟、ガンプラファンから恨まれた境界戦機
→バンダイのブランド戦略と流通戦略
→構造改革がもたらす投機的転売

片持ち関節
 主役ロボット三体の特長は産業ロボットのような片持ち関節を採用した点にある。ただし今回のジョウガン改では一部挟み込み関節に改められている。
それでも関節可動範囲が広く、片膝立ちも正座も土下座もできる。香箱座りもできなくはない。お辞儀も得意だ。さすが境界戦機だ、真の日本人を表す設計なのだ。

 この広い可動範囲を実現する片持ち関節はしかし、リアリティに欠けると不評。

同社が昔発売したロボット模型の関節可動範囲は狭く、90°曲がるだけでも御の字だった。
アニメのメカデザイナーは1980年代半ば以降、二重関節などを描いて可動範囲が拡がるようデザインしてきたが、同社は小スケールではそれを再現せず、より高価な大スケールで再現してきた(例外もある)。それが当時の商品開発方針だったのだろう。

模型ブームが過ぎ去った1990年代、工夫を凝らすようになって小スケールにも二重関節や球体関節を導入して可動範囲を拡げてきたが、そのぶん複雑で部品点数が増えた。それを一挙に解決すべく採用したのが片持ち関節だと考えられる。なるほど工業デザインだ。

この形式は模型の関節可動範囲を拡げるため、製品の最終形態である模型のためのデザインと見なすのが妥当だろう。

 これについてアニメ作中で何か設定を付けるなら、初期投資が小さい形式とか言えばいい。
主人公が属する武装抵抗組織は慢性的に資金不足のため、初期投資が小さく、国内に溢れているはずの産業ロボットの部品を流用できる形式を選んだ、と設定すればいい。それなら部品を探して渡り歩くロードムービーにもなれる。
強度についてはクロスローラベアリングを用いていると設定してもいいし、初期投資は小さいが部品損耗が激しくて維持費がかかり武器商人のいいカモにされているとしてもいいし、架空だから無視するのでもいい。
 脚の特異な関節構成(獣脚)も模型のためのデザインかもしれない。脚を屈曲させてもバランスを失わずさまざまな姿勢を実現できる。しかしコサックダンスをさせるのは厳しかった。
問題はアニメ制作スタッフがそれを十全に活用できなかったことだった。獣脚に合わせてヴェロキラプトル等竜盤目を参考にして従来とは異なるアニメロボットの挙動を新たに開発しなければならなかったが、それをしなかった或いはできなかった。
結果、主役ロボットが最もよく動いているのが模型のCMとなった。

 今回のジョウガン改が登場する21話では比較的ロボットが動いているが、代わりに敵役のロボットがあまり動かず、発展と改良の余地を残している。

1/72スケールの縁(えにし)
 これは飛行機模型で主流の縮尺。
ロボットの設定身長をなんとか6m前後にして、戦車等陸戦兵器と組み合わせられる1/48と1/35で商品展開したほうがよかったんじゃないかと思う。
もっともこのアニメには戦車等は登場せず、航空機と空を飛ぶロボットが登場して模型化もされている。しかし空戦はなかったし、地上を動き回る場面が主である。
1/48も発売されてあるが主人公機「メイレスケンブ」及び「メイレスケンブ斬」のみ。

 ところが1/72そしてφ4mm関節軸には縁があったのだ。三十年前の部品箱を漁っていたとき、この模型に合う内径4mmポリキャップを見つけた。
元製品を探すとそれは「蒼き流星SPTレイズナー」(というロボットアニメがあった、1985~86年)の1/72模型用だった。
レイズナーのデザインは二重関節だが、バンダイが発売した1/72模型では再現されず、代わりに金属製部品が付属するという、企画コンセプトに大いに疑問を持つ商品だった。なお同アニメは放映が打ち切られた。そして境界戦機プロデューサが参考にしたアニメだ。

 話を戻して、架空のロボットだから設定上の縮尺に囚われずに他のスケールと組み合わせても違和感はあまりない。 

以下次回→ジョウガン改第三回
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→境界戦機第一期第一部
→境界戦機第一期第二部


φ4mmポリキャップは他社からも発売されているが手にしたことはない。