機動戦士ガンダム 水星の魔女

 これはたぬきアニメではない。復讐譚であり学園ものであり少女少年の成長物語であり、そしておそらくは人類が進化するためにサイボーグ化するSFだ。
毎日放送(データ放送あり)等で放送中、バンダイチャンネルガンダムファンクラブ、Hulu、ABEMA、U-NEXT、dアニメストア等で配信中。

10話までみた。企業による勢力圏が国家より幅を利かせる宇宙開発時代。ロボットパイロット養成を兼ねた学園(宇宙にある)を舞台に、ロボット開発企業を代表して決闘を繰り返す学生らの話だ。

主人公が辺境から来たとか、学園転入初日から決闘して学園一位になるとか、同性で婚約とか、主人公は禁止された危険な技術でロボット(作中ではモビルスーツと呼ぶ)を操っていたとか、親からの独立とか、けれん味もあれば変革を予感させる要素もありながら定番のテーマもある。
そして主人公らは起業して、その危険な操縦技術を医療技術として原点へ回帰させると宣言する。

 「機動戦士ガンダム」1979~1980年シリーズは続編だけでなく物語と世界観を一新したガンダム──アナザーガンダムも制作されている。「水星の魔女」はその最新作。旧作との共通点は、ガンダムというロボットが登場する点である。

ガンダムシリーズは戦争ばかりしてきた戦争アニメだった。このアニメは戦争しないガンダムに挑んでいる。だが2023年4月から始まる第二期ではどうなるかわからない。

 第1話もプロローグ第0話も好評なこのアニメの主人公は境界戦機のヒロインと同じ声優で、どちらのキャラクターもふだんは控え目ながらロボットに乗り込むと物怖じせずに戦闘に臨む赤毛の少女、演技の方向性も似ている。
そしてトマトが登場する。トマトは境界戦機2話で主人公が盗もうとして見つかって罰として農作業させられる因縁の野菜だ。

境界戦機はこのようにして、水星の魔女の犠牲踏み台になったアニメだと、その人気に便乗して紹介したいところなのだが、世間ではもっぱら水星の魔女第1話と「少女革命ウテナ」1997年との類似性が取りあげられ、境界戦機がすべりこむ余地などなかった。
さすが境界戦機だ。あらゆるアニメから弾かれる独自性を持っているのだ。境界戦機復活の日はいつだ!
しかも2話以降はウテナから別の話題へ移った。これが人気作というものか……

なおBS11では境界戦機再放送(2022年秋冬)の後番組が水星の魔女であるため名実ともに踏み台となる。