境界戦機 極鋼ノ装鬼

 極鋼ノ装鬼(きょっこうのそうき)は。境界戦機の続編にあたる短編アニメ。YouTubeバンダイチャンネルほかにて2023年8月~10月に配信され公開中。→境界戦機 極鋼ノ装鬼【全6話 一挙配信中】 - YouTube

全話みた。境界戦機シリーズは、日本が経済破綻寸前になって国外から支援されるうち占領され、その日本を取り戻すため武装闘争するロボットアニメ。
今回の極鋼ノ装鬼では、南海の孤島で武装抵抗組織と他国軍との戦闘を描き、そつなくまとまった小品。作品世界が連続しているが第一期の登場人物は登場しない。

 私はこの作品に不満がある。第一期にみられた触媒作用(とでも呼ぶようなもの)がみられない。
あのアニメをみた人々は、右派が優勢な今日にあって、右派が否定し左派が肯定してきたことを言い出す現象がみられた。

例えば、日本を武力闘争で解放しても、内在する諸問題が解消・解決されない→暴力では解決しないのだと、SNSで「暴力はすべてを解決する」という言葉が流行するなかで指摘される。
中国を模した勢力が日本人を拉致して人身売買するという、右派が嬌声を上げて喜びそうな話も(5話)あまり評判が芳しくなかった。

例のおにぎり百円セールも(同じく5話)、あれはありえないと散々揶揄されたし私も首を傾げた。
だが再考すると、あれはデフレが病気と唱えるアベノミクスの主張を反映したと解釈できる場面であり、境界戦機はアベノミクスが行われなかった日本を描いていると解釈できる。あの場面がありえないなら、つまり円高デフレを続けて経済破綻しないならアベノミクスが不要だったと結論できる。
境界戦機アンチ(概ね自民党支持層)も左派と同じく、喧伝されるアベノミクスの成功に欺瞞と不安を感じていたのだろう。

 およそネトウヨ好みに作られたであろう第一期第一部はしかし、境界戦機ファンにもアンチにもネトウヨ的言説を否定させる言葉を言わしめた。左派がしようとして出来なかったことをあのアニメは難なくやった。
だがこの触媒作用は、狙って出たものではないだろうから、それらをもって極鋼ノ装鬼の評価を下げようとは思わない、むしろ初めて触れる境界戦機アニメにはこちらを薦める。 また三期制作の折りにはそんなことをあまり気にせず制作されたいと思うものである。

 なお境界戦機第一期第二部では主人公側は中国・ロシア・豪州(或いは太平洋島嶼国)を模した勢力と結託して新潟に拠点を定め、米国を模した勢力と対決したので、さらに批判されている。
もっとも日本は古来、日本海交易(環日本海経済圏)で賑わってきた国であり、ネトウヨが大好きな戦前も大東亜共栄圏構想も日満支ブロックも太平洋側に主眼を置いていない。