機動戦士Zガンダム

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ニール セダカ作曲主題歌でも知られるが版権使用に問題あって、配信等では省かれる場合がある。


 TVアニメ「機動戦士ガンダム」から五年経って、新たな主人公と新たな主役ロボットが登場する続編「機動戦士Zガンダム(きどうせんしゼータガンダム)」が1985年に製作された。
本放送当時はよく批判され主人公が嫌われるも、前作のように打ち切りの憂き目には遭わなかった。が、ゼータの続編「機動戦士ガンダムZZ (ダブルゼータ)」では路線変更され、「明るい」ガンダムが目指された。

 作中では七年後という設定で始まり、前作の主人公とともに勝利した勢力が、エリート主義を振りかざして強権的になり、敵勢力として描かれる。
続編の主人公は怒れる若者である。強圧的にふるまうエリート集団に反感を覚え、些細なことを発端に対立して追われ、反エリート主義組織に参加する。

●主人公特権・特性
 物語の主人公には何かしらの特権・特性──物語を駆動させる積極性や熱意、強運、類い稀な才能そして目的が与えられる。
このアニメの主人公にも、前作や他のロボットアニメと同じく主役ロボットを操縦すること、秀でたパイロット適性が与えられる。
敵ロボットが出撃してくるところを見つけて「出てこなければ撃たれずに済むものを!」と言うなど(12話だったと思う)、主人公特権・特性を自覚しているかのようにふるまう。
また作中では組織の指導的人物から、反エリート主義という大義を与えられようとして拒否する。

 主人公の怒れる若者は、その特権・特性を所有していながら目的を持たず、反動で行動する若者だった。一見無責任だが、大人が与える大義に乗っかって戦闘するなど、利用されているに過ぎないのだから、反動を示すのは直感的な自衛行動でもあった。

ニュータイプと強化人間
 しかしそんな怒れる若者も恋をする。相手は敵のパイロットで「強化人間」だった。

ガンダムシリーズにおける主人公特性にニュータイプなる概念がある。
立体的に機動するロボットの中で空間識が研ぎ澄まされて意識が拡張されること、類い稀なパイロット適性のようなものと考えられているが、はっきり定義されていない。
ニュータイプが戦力として有用だから、洗脳や投薬で人工的に再現しようと開発されたのが強化人間。情緒不安定な女性で、中立都市で主人公と出逢う。
彼女はロボットに乗ると豹変し攻撃的になって、主人公は彼女を救うために彼女と戦わなければならない、という受け容れ難い状況におかれる。

 戦いを止めようという主張と、ロボットパイロットとして戦闘する役割を課され、強化人間の彼女を喪ってなお戦い続ける彼の人格は最後に破綻する。前作と違ってこの主人公は製作者に救われなかった。

 このアニメでは主役ロボットが二種あり、作中で交代する。
玩具宣伝フィルムでもあるロボットアニメで、この方法は重宝がられたようで1980年代のロボットアニメに散見された。1990年代以降は主役ロボットが交代するどころか始めから複数登場するようになる。

主役ロボット交代劇は1970年代すでに「マジンガーZ」から「グレートマジンガー」への更新で行われていたが、一作品中で行うのは「戦闘メカ ザブングル」(1982年)が初だったと思う。ザブングルガンダムシリーズと同監督、同製作会社。模型も同じおもちゃ会社から発売された。

 またガンダムシリーズは敵役のロボットも多数模型化され、一作品で複数のロボットを売る方法を確立した。なお先達には「宇宙戦艦ヤマト」シリーズがある。
このことはしかし、おもちゃ会社が生産設備を多数用意することとなり負担も増えた。このアニメでは、主人公が最後に戦う大型敵ロボットが模型化されなかった。スポンサーからも見限られたかに見えたが、放映後十五年以上経った2002年、正式に模型化される。

 本放送時失敗作とされて評判が悪かったアニメにも、忘れずにいる者がいたのだった。このアニメの惹句は「きみは刻(とき)の涙を見る」である。


 ガンダムプラモ略称ガンプラは投機対象にされて、正価より割高で転売されることが往々にしてある。実に新自由主義的な世相だ。
バンダイは昔から飢餓商法を行うと言われているのだが、例外的に入手しやすいのが我らが「境界戦機」プラモなのだという。不人気作なのに、なんて民衆にやさしいんだ。
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 TVシリーズ放映から20年経った2005年、映画化され、結末が異なる。